アクチュアリーのつらい点【やめとけ、激務、なくなるは本当?】

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「アクチュアリーって辛いの?」

「アクチュアリーはやめとけと先輩に言われた」

「アクチュアリーは激務って本当?」

こういった質問を最近よく受けます。実際のところそれらは一部は事実であり一部は間違いです。この記事ではアクチュアリーからの声をもとにしてアクチュアリーが実際にどのような働き方をしているのかを紹介していきます。メリットもデメリットも踏まえてアクチュアリーを目指したいという人は是非最後まで読んでみてください。

この記事から得られること

・アクチュアリーのメリットとデメリットがわかる

・実務経験を積んだ立場からの意見がわかる

・自分がアクチュアリーに向いているかどうかわかる

この記事の信頼性

・アクチュアリー実務経験者が執筆

・アクチュアリー社員の意見を多数反映

・アクチュアリー専門塾が監修

なお結論から言うと、アクチュアリーはメリットとデメリットがあるものの、適性のある人にはおすすめできる職業です。

MAXITでは就活対策の講座をご用意しているので、検討してみてください。

では内容に入っていきましょう。

アクチュアリーのメリット

まず最初にアクチュアリーになるメリットを簡単に説明します。

高いステータス

アクチュアリーであるということは金融業界で特定の職種で地位を確立しているということなので社会的な地位や間違いなく認められます。

海外ではアカデミアの地位が高いこともあり、グローバルな働き方が実現可能であることも本当です。実際に、海外勤務をしている知り合いも数多くいます。

給与の高さ

アクチュアリーの給与は平均的な総合職に比べて高いです。しかも金融業界自体が平均給与が高い業界なので高給が望めます。この点は、大学時代の同級生からも羨ましがられるポイントです。

転職のしやすさ

アクチュアリーという専門性があるので転職は容易です。海外でもアクチュアリーという職種の枠は広がっています。会社は上司との相性や配属先の部署など、ランダムな要素が大きいためどうしても転職を考える人は多いですが、そんなときにアクチュアリーであることはアドバンテージです。

経営への影響度

専門性をもって経営指標へ意見を出すことができます。他の職種では考えられないような業務を行うことができるのがメリットです。一般的な年功序列の企業に勤めながらも、意思決定に関わっているやりがいを感じられるのは専門職ならではです。

営業をやらなくて良い

これは理系の方にはよく聞かれるのですが、営業をやらなくていいことも大きなメリットです。ただし1年目には研修として営業をやる会社も多いので注意しましょう。

地方に飛ばされない

金融業界あるあるとして地方に飛ばされるということがあります。縁もゆかりもない家に飛ばされてしまうのは嫌だという人も多いでしょう。例えば半沢直樹のような社内での争いがあるのも事実です。アクチュアリーの良い点は地方に飛ばされないので安心してマイホームを購入できたり、働き続けることができることです。社会人になると実感しますが、この点のメリットはとても大きいです。

しかも金融系のオフィスは一等地にあることも多いので、そこで一生働けることが良いと言っている人も多いです。

数字やプログラミングの知識を活かせる

自分ならではの強みを活かすことができます。数学もそうですし近年はプログラミングを使う場所も増えています。私は採用に関わることもありましたが、専攻でもプログラミング系の質問が近年は増えている実感があります。社内業務でも、IT系の素養が求められることが多いからです。

職種自体がなくなることは考えづらい

アクチュアリーがなくなる職業としてあげられることもたまにありますが、計算を行う以外にもアクチュアリーならではの専門的な視点が求められることが多いのでなくなることは考えにくいです。また法律上アクチュアリーがいないと保険会社は成立しないことになっているので全くなくなるということはないでしょう。

アクチュアリーのつらいこと

アクチュアリーの辛いことを説明します。

アクチュアリーやめとけと近年言われる理由

なぜ近年アクチュアリーやめとけと言われるのでしょうか。それは一言で言うと入社後のギャップです。数年前はアクチュアリーの良いイメージだけがネット上に転がっていたのでそれを見ていた人がアクチュアリーに過度な期待を寄せていました。そして入ってから絶望する人が増えていたのです。

しかし近年アクチュアリーとして入社した人から絶望の声を聞く就活生が増えています。これが就活生の間に広がる不安の正体です。

では事実はどちらなのかと言うと、中間です。過度な期待を寄せていた数年前のアクチュアリー就活生の声ほどにはひどくありません。しかしネット上の良い情報だけをかき集めてきた就活生にとっては耳の痛いような話です。

この記事ではアクチュアリーとして働く人の声を踏まえたなるべくリアルに近い意見をお届けします。

ひたすら勉強の日々

正会員になるまでは、アクチュアリー資格試験の勉強が大変です。大学生の時との違いは、仕事しながらの勉強であり、仕事も残業が多く試験勉強する力が残っていないこと。

20代のうちは、プライベートがほぼないと考えても良いかもしれません。

実際、アクチュアリー資格試験に合格することができずに、無力感から多業種に転職する人もいます。会社によっては、30歳ごろまで資格を取得できないと、システム系など他の部署に異動させられるところもあるとのことです。

頑張りと給与が釣り合わない

試験勉強が大変過ぎるわりには給与がアクチュアリー以外の総合職とあまり変わらない、という不満もよく聞きます。インターネット上の情報では、「年収1000万は固い」といった良い情報がたくさんありますが、実際のところ、会社によりけりな部分も大きいです。

試験勉強を時給換算すると、どうしてもつらくなってしまうところ。なので、数学の勉強なら苦にならない、といえるくらいのひとは、その気質が大きなアドバンテージになるでしょう。

ただ、ここの「給与÷頑張り」の値が小さいという問題は、「頑張り」が主観であるところから考えてもわかる通り、人により意見が異なります。個人的には、数学が好きな人であれば、他の職種に比べて考えたときに、アクチュアリーになる選択肢は良いものだと考えています。

社会人になると多かれ少なかれ、「これだけ頑張って給料はこれだけ!?」と感じる人が多いですが、その度合いがアクチュアリーはまだましな方だと、大学時代の同期と話していて感じます。

試験勉強がつらい

アクチュアリーは試験に受かって最終的には正会員になることが至上命題なので、試験に受からないと上司に詰められることも珍しくはないようです。なので、特に12月にはプレッシャーにさらされることになり、生きた心地がしなかったというアクチュアリーも多いです。

ここを乗り越えれば転職市場での評価もかなり高くなるのですが、勉強を継続できるかどうかはアクチュアリーの大きな素養とされます。

試験以外の勉強も大変

資格試験以外にも、業務をこなせるようになるために勉強が必須となります。具体的には以下のような分野です。

  • 法律、規制、制度の改正
  • 会社指定の保険系資格取得
  • プログラミング

アクチュアリー以外の人にとっては、専門的な内容でもアクチュアリーの人に聞けばわかるはず、と思って仕事を持ってくるわけなので、専門分野について中途半端な理解だと日常業務がつらくなってしまいます。アクチュアリーは良くも悪くも専門家として社内では見られるため、周りよりも圧倒的に勉強を重ねて、他の人から知識面で信頼を得る必要があるのです。

この点においては、例えば弁護士や医者のように、その道のプロとして見られるので、非常にやりがいを感じる人も多いかもしれません。大きな専門家としての責任を、プラスにとらえるかマイナスにとらえるかというところでしょう。

基本的に激務

激務さには二つの原因があります。一つ目は業界の平均残業時間によるもの。二つ目はアクチュアリーという職業によるものです。前者については金融業界は他の業界に比べて残業時間が多いことで知られています。後者についてはアクチュアリーはその職種の都合上代わりがきかない事や、アクチュアリーに依存した業務も多いため、忙しくなりがちです。(この「アクに依存した仕事」は、転職されないための給与の高さと裏表の関係です)

基本は土日休みとなっているものの、繁忙期に休日出勤しているアクチュアリーは珍しくありません。特に経理部などでは決算期にこの傾向が顕著です。

アクチュアリーに限らず高度な専門職ではよくあることですが慢性的な人手不足に陥っている職種であると言えましょう。(この「慢性的な人手不足」も、「転職しやすい」との裏表の関係です)

会社のカルチャーが古い

大企業は旧態依然とした職場がほとんどであり、堅苦しく自由度の低いカルチャーで働くのに疲れている人もいます。もともと数学系の学部に在籍していた人も多いので当時の自由で実力主義な空気感からのギャップに戸惑う人も数多くいる印象です。

アクチュアリーは専門職であるとはいえ金融業界の比較的大きめの企業という場所で働くということにまず理解をしておいた方が良いでしょう。具体的には以下のような働き方です。

  • 社外の人と会うわけでもないのに毎日スーツ着用
  • コロナ禍なのにリモートワーク環境が整っておらず毎日出社(これは企業によるが、全体としてこの傾向は強い)
  • 年功序列。若いうちから出世できるのは一部の外資系企業のみ。
  • 長時間残業の常態化、付き合い残業の文化。飲み会などもある。

これらは日系大手企業であればたいていどこでも当てはまることであり、アクチュアリーという職種に固有の話ではないですが、アクチュアリーを目指す理系院卒の方などは、上記の日系大手企業のカルチャーが肌に合わないことが多い感覚です。

部活で体育会系に所属していた人なら古いカルチャーにもうまく馴染めるでしょうが合理的に考えることを好む数学系の人は最初の方は苦戦している人を多く見ます。あくまで就職するのは古い会社でありそこに合わせることが必要であるということを理解してから就職した方が良いでしょう。

各企業の特徴についてもMAXITでは情報を保有しているので、自分に合った会社を見極めたい人はご相談ください。

社内の対人ストレス

アクチュアリーを目指す人は数学が好きで、いろんな人と話し合いながら仕事を進めるよりは、一人で黙々と数字を追いかける方が肌に合っている、ということが多いです。これまでの人生でも勉強に強みを見出しており、そちらにフルで集中してきた人も多い印象です。これ自体は素晴らしい事なのですが入社後に抱えるかもしれないストレスについては前もって理解しておいた方が良いです。

社内での対人関係ってストレスに感じる部分はアクチュアリーにとって限られています。それは一言で言うと合理性のなさです。会社の中での人間関係に合理性はありません。例えば部署ごと人ごとに言うことが全く変わっていることは日常茶飯時です。その上で正しくないことも受け入れて、社内調整をする必要があります。

正直自分よりも優秀でないと思う上司の言うことも聞かなければいけません。この点では数学科や理系の学部とはカルチャーです。数学科では何を言うかが絶対的な正しさであったのに対して、会社では誰が言うかも重要なのです。こういった非論理的な人間関係をうまく調整することが要求されます。

単純作業が多い

金融業界はIT化の難しい業界でもあります。なので機械で代替可能な作業が人間の手で行われていることは珍しくありません。そして単純作業が回ってくるのは誰かと言うと新入社員なわけです。アクチュアリーも例外ではなく部署の中では一番若いこともあるので単純作業が回ってきます。例えば大量の数字をエクセルに手入力したり、コピー&ペーストをひたすら繰り返していたら一日が終わっていた、という話もよく聞きます。

単純な作業に抵抗のない人は良いですが天才型の数学系出身の人はケアレスミスが多いこともあるのでここでつまずく人も多い印象です。むしろ試験に受かるのはちょっとぐらい遅くても愚直にミスなくこなせる人の方が若手時代は特にうまくいっています。

非効率な業務

会社業務の非効率さに意見をしても変わらないと悩む人も多いです。例えばITサービスを使えば1秒で終わるような作業であっても紙やハンコを未だに使っているところも多いです。意味のないような会議がたくさん行われていることも多いですし、効率化をしようと思えば無限に効率化できる部分はあります。しかしそこは様々な事情により現行のオペレーションとなっています。若手時代には特に理解不可能なことが多いかもしれないですが、非効率な業務であっても一生懸命頑張るといったマインドを持って仕事に臨む必要があります。

業務では難しい数学を使わない

数学科からアクチュアリーになる人が多いですが、その中でも「会社に入った後も数学をやりたい」と思ってアクチュアリーになったものの、それが妄想に過ぎないことがわかり落胆する、という人が後を絶ちません。

実際のアクチュアリー業務で使う数学は、多くの場合は大学教養レベル以下であり、さらに言えばエクセル上での四則演算だけで回ってしまう仕事も多いです。したがって、アクチュアリーになったら(難しい)数学を使った仕事ができる、と思い込んで入社してしまったことにより、入社後にガッカリする人が多いです。データサイエンティストのような仕事はごく一部です。

特に悩む人が多いのは周りが数学に詳しい人ばかりではないという点です。保険会社や銀行に勤める多くの人は文系出身で体育会系出身といったパーソナリティの人が多いです。今まで大学時代に接したことのないような人と一緒に仕事をすることもたくさんあります。高校の微分積分も理解できない人に対してアクチュアリーの専門的な内容をわかりやすく説明する必要があるのです。その際に厳密な数学的な理論を犠牲にして分かりやすく説明することも求められます。数学が好きな人にとってはここが辛い部分でしょう。あくまで相手視点で役立つ説明が求められているのであって正確さは求められていないのです。

アクチュアリーに向いている人の特徴

ではアクチュアリーに向いている人はどのような人なのでしょうか。

自由時間にも勉強できる人

アクチュアリーを目指す20代は、休日にも勉強のことを考えていられる人が試験に受かって行きます。なのでアクチュアリーの勉強に時間をしっかりと捧げられることが第一条件となります。

ただここは、その人の勉強効率にも依存します。たとえば極端な例ですが、2倍の効率で勉強できる人なら半分の勉強時間で済みます。はやめに周りのアク志望者や現役のアクに接したり、過去問を把握することで、「想定よりも勉強が大変」と思わなくて済むでしょう。体感ですが、ここの勉強に関する事前分析や思考が足りていない人が、入社後に勉強の大変さに初めて気づき、嘆く例が多く見られます。

一生の職種を決めることになるので、早めに多くの情報を収集して、逆算して考えましょう。

単純作業も苦でない人

アクチュアリー業務に知的好奇心を満たせるものや高度な数学を使えることを求める人も多いですが実際の業務のほとんどは単純作業です。これを淡々とこなして成果を上げることに楽しさを見いだせる人はアクチュアリーをしていてとても楽しいでしょう。逆にケアレスミスが多いなど事務処理に苦手意識のある人は仕事でも大変なことが多いかもしれません。

長時間の仕事にも抵抗がない人

金融業界の中のアクチュアリー職種は長時間の仕事をすることになりがちです。長く働くことに抵抗のない人の方が向いています。他の業界の人と話していると自分の業界の業務時間が長く感じてしまうかもしれませんがそれでもやりがいや仕事の面白さを感じられて転職をしたくないと思えるような人はアクチュアリーに向いています。

文系的な、会計や法律にも興味がある人

特に2次試験に顕著な傾向ですが理系の知識よりも文系の知識の方が求められることも多いです。社内での文書作成においても会計や法律の知識を用いることが多く1次試験の生保スーリヤ損保数理の計算式よりも、直近の法令に基づいた資料作成などを行います。学生時代から文系科目にもまんべんなく興味が持てたという人は理系科目と文系科目の総合格闘技としてアクチュアリーの業務を非常に面白いと思えるでしょう。

わかりやすく理系の知識を説明できる人

職場においては正確性よりも分かりやすさが重視されます。まず相手が知りたいことが何なのかを見極めて自分の持っている知識を必要なぶんだけ分かりやすい形で与える。これが社会人の仕事の仕方です。粘り強く専門知識のない人に対して説明ができることが求められます。例えば学生時代から個別指導で偏差値の低い生徒に対して粘り強く教えるのが好きだったという人は向いているでしょう。もちろん社内の人も文系である程度高学歴を手に入れている人が多いですが、数学系の理系学部と比べると専門知識のなさにおいては苛立ちを覚えることもあるでしょう。お互いをリスペクトして社内で円滑なコミュニケーションを行えることが大事です。

研究職ではなくビジネスマンとしての就職に納得している人

アクチュアリーは研究職ではありません。ここまでの説明で多くの人が感じたと思いますが一般的な文系での就職と近いです。金融業界の総合職サラリーマンの内のアクチュアリーという職種である、という理解をしましょう。その方が入社後のギャップが少なくて済みます。

まとめ

この記事で説明したようにアクチュアリーは一般的なイメージと比べてサラリーマン的な仕事が多いです。ただし難しい資格試験をクリアしないと働けないことや、社内では専門家として見られることから、上記の点に納得をした上であれば素晴らしい専門家としてのキャリアを描けるでしょう。

繰り返しになりますが、ここ数年「アクチュアリーはつらい、やめとけ」と言われる理由は、過度に膨らんだアクチュアリーへの期待も大きいです。この記事を今ここまで読んでくださった、アクチュアリーへの熱意と情報収集能力があるあなたなら、今後も適切に就活を進めていけば、あなたの望む働き方を実現できるはずです。

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