年金数理は1次試験のラスボスです。
クセが強いので面食らってしまう人が多いですが、ちゃんと対策していけば攻略可能です。
なお、年金数理は1次試験の中で最後に残しておく人が多い科目です。
まだ他の科目の受験が済んでいない人は、以下の記事を参照して、他の科目を先に受けましょう。
では、内容に入っていきます。
全体像
ほかの科目に比べると、圧倒的に参考書の情報が少ない科目です。にもかかわらず、難易度は1次試験最強です。
ほぼ唯一の頼りである指定のテキストもクセが強く、説明のわかりづらい箇所がたくさんあります。理解できるか否かは、もはやセンスによると言われるくらいです。
サラサラ読む、なんてことはできず、1ページずつ「読み進める」イメージで取り組むことになります。数学書のような感じですね。
難解な本を読みなれている数学科の人ですら、
「理解できない」
とアクチュアリー試験を諦めてしまうほどの難解さです。数学系の科目とはまた違った方向性の式変形を要求されるので、アクチュアリー数理ならではの式変形パターンに慣れていることが重要です。
数式を理解する難しさというより、
年金制度自体への馴染みのなさ
日本語の制度を数式に翻訳する際の対応づけの理解の難しさ(和文式訳)
複雑な形の数式の操作
といったところでつまづく人が多いイメージです。
これが理解できないからと言って、
「自分はアクチュアリーに向いていないんだ」
と諦めるのだけはやめてください笑
テキストのわかりにくさをいかにして補うかの勝負になります。ここがスムーズにいった人は、「年金制度自体の煩雑さ」に悩まされることも少なくなります。
そもそも、年金制度自体がとても難しいものです。日本語にしても、法学部や経済学部の人たちが「難しい」と言いながらうんうん唸って理解するものです。
ましてや制度を数式で表すなど、難しくなるのも無理はないことです。
年金数理の勉強を進める上では、今わかっていないのが「年金自体の理論」なのか「数式の変形」なのかをはっきりさせた上で、適切な参考書を頼って学習を進めましょう。
試験自体は損保数理と同様に計算量が膨大という印象です。万が一計算で時間を取られる問題に時間をかけすぎると、本来は取れたはずの他の問題を取りこぼしてしまうことになります。
年金に限った話ではありませんが、本番では各問題の計算量・難易度をきちんと見極めることが重要です。
全てを理解しようとするより、取るべき問題で60点を確実にとっていく方針がよいでしょう。合格者の中でも、「年金数理は最後まで理論がわからなかった」と言われるくらいです。
完璧に理解しようと教科書を読み進めるよりも、「試験問題で60点を取れるようになること」にフォーカスして学習を進めましょう。
くれぐれも、はじめからスラスラ教科書が理解できると思ってのぞまないでください。
着実にやっていけば、理解することは十分可能です。
出題分野
以下の分野から出題されます。
年金財政の基本
年金数理の基本原理
計算基礎率
年金現価率
定常人口論(含む人口モデル)
財政方式
保険料と責任準備金
積立金と過去勤務債務
数理的損益分析
各分野でそれぞれ重い数式が出てくるので、1ページずつ確実に読み進めましょう。
必要な前提知識
生保の知識が必須です。
アクチュアリーの勉強を始めるにあたってよく言われることですが、年金の勉強を始める際には生保数理の知識を持っていないと習熟が思うようにいかず厳しいと思います。
まず、生保の勉強をしっかりと完成させることが大事です。以下の記事を参照しながら、生保の勉強法を理解していってください。
生保に合格したら、年金数理の勉強に入っていくことになります。
参考書
年金数理の勉強方法は生保数理に近いものになります。
指定教科書と過去問を中心に勉強を進めます。
テキスト
「例題で学ぶ年金数理(仮)」(アクチュアリー受験研究会)
過去問
一般向けの年金の本
生保数理の教材
以下でそれぞれ、詳しく説明していきます。
テキスト
難しいですが、試験範囲内の内容をきちんと厳密に説明されています。
この本だけで理解するというより、「他の本の助けを借りながら頑張って読み進める」くらいのイメージが合っていると思います。
範囲自体はきちんとこの本でカバーされていて、このテキストを「理解した」という状態をゴールとして設定すれば大丈夫です。
難しいですが要点はしっかり書かれていて、この本を軸とした学習を進めることをオススメできます。
「例題で学ぶ年金数理(仮)」(アクチュアリー受験研究会)
とてもやりやすい教材です。
教科書と並行して使いましょう。
年金は問題数が足りなくて困ることも多いと思いますが、一問一問にしっかりとした知見を得られる、より深く理解するために役立つ教材です。
過去問
年金も過去問が最高の教材です。
問題文が複雑なので、圧倒されないように問題数をこなしていきましょう。年金数理は、過去問を解かないと、実際どんな難しさがあるのかわかりにくい科目でもあります。はやめのタイミングで一度過去問を見ておき、最終到達点を把握しておきましょう。
一般向けの年金の本
たとえば、以下の本はおすすめです。
・図解 いちばん親切な年金の本
・最新 知りたいことがパッとわかる 年金のしくみと手続きがすっきりわかる本
このような、アクチュアリー志望でない人に向けたわかりやすい年金の本でまず年金自体の知識を増やしておくことがおすすめです。
年金数理の教科書が理解できない場合、本当は数式でなく年金自体のシステムへの理解度が低いことがあります。
特に、数学科の大学生はこのような制度面での知識に疎いことも多い印象です。逆に、経済学部の学生や社会人で経理方面の人はベースとして年金の知識があることが多いのですんなり知識が入ることも多いです。
年金は、一般向けのわかりやすい本が一番充実した科目でもあります。本屋の金融系コーナーに売ってるので、パラパラとめくってみて自分に合うものをピックアップしてみましょう。
年金数理の学習中に「これってどうなってたっけ」と思ったらすぐに参照でき、年金の制度の理解に役立つはずです。
生保数理の教材
年金の教科書を読んでいて理解できない場合は、生保数理に戻って理解度を高める必要もあります。
特に、生保数理の教科書の証明をできるようにするのが有効です。ここで、乗り越えた壁である生保数理があなたのもとにリターンしてきます。
生保数理の試験前には暗記で済ませていた公式も根っこの部分から理解をすることで、年金数理に通じる考え方を身に付けることができます。
年金数理の勉強は、「生保数理くらいは楽勝」と言える力があって初めてまともにできるものです。
生保数理をしっかり固めることはかなり重要です。生保数理が終わっても、くれぐれも教科書を捨てたりしないようにしてくださいね!笑
学習プラン
まずは基本的なトロ―ブリッジの公式を暗記することが最も重要です。
公式を暗記する際は、各記号の意味を図示しながら理解することをお勧めします。頭の中で完全に理解をしておくのです。
年金数理はビジュアル的な解説が教科書に少ないですが、自分で補足的な説明を用意して教科書に書き込むことで記憶の定着を良くすることができます。
できれば、人に説明するのがオススメです。
人に説明できるくらいの深い理解が一番求められるのが、年金数理という科目です。
教科書の数式と図を何も見ない状態から書き出せるようにしておくと、試験本番でも迷いなく手を動かすことができます。
公式の理解が十分になってからは、過去問演習を
通じて典型的な問題や応用的な問題に取り組みます。
テキストの通読
章末の練習問題
例題で学ぶ年金数理(仮)
過去問演習
以下で詳しく説明していきます。
1 テキストの通読
生保数理と同様に記号の理解(財政方式ごとの保険料、責準・積立金がどのように書けるか等)を優先的に行いましょう。記号をまずは完璧に理解をできたうえで、応用的な内容に進めるようになります。
第3章の最後のページの図の関係式をサラサラ書けるようになってから理解がかなり進んだように思います。この練習を何回も繰り返しましょう。毎朝起きたらすぐにこの図を書くくらいのトレーニングをするつもりでいましょう。
2 章末の練習問題
教科書の理解度を確認できます。
数少ない年金の問題ですが、何度も解いて年金数理の思考法を頭の中に定着させましょう。
3 例題で学ぶ年金数理(仮)
問題演習を行います。
アクチュアリー試験は基本的に、過去問がとても重要な教材です。年金数理は関連書籍があまり市販されていないので、相対的に過去問がとても重要な科目です。何度も何度もやりこみましょう。
4 過去問演習
「例題で学ぶ」などでは網羅していなかった場所を中心にして、演習をしていきます。
解説が不親切なところも一部ありますが、頑張ってくらいつきましょう。
毎日ずっと年金数理を勉強していると、不思議と「わかる」と感じるタイミングがくるはずです。大学受験の物理学とかもこの上達パターンは経験した人がいるかもしれません。自転車に乗れるようになるように、慣れることで「年金数理脳」ができてくる人が多いイメージです。
まとめ
年金数理は簡単な科目ではありませんが、着実に勉強を積み重ねれば対策が可能です。教科書の難しさにめげずに、勉強をしていきましょう。
勉強方法に悩んでしまう、という人は、アクチュアリー試験対策講座もご活用ください。