アクチュアリーの過去問で試験対策を!試験範囲から解くポイントまで解説

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 アクチュアリーは、歴史のある、高度な数学が求められる仕事です。17世紀のイギリスで始まった生命保険で、確率論や統計学を用いた支払額や掛金率を求める専門家がアクチュアリーでした。現在のアクチュアリーの仕事をしている人は、生命保険だけではなく、年金や企業などの分野でも活躍しています。100年以上継続している数理のプロフェッショナルです。

 そのため、難易度は高くてもアクチュアリーの会員は5000人を超え、ホームページでも資格取得のための情報が多く、アクチュアリーに対する関心は高くなっています。アクチュアリーの方々は、生命保険、信託銀行、コンサルティングなど、多方面で活躍中です。さらに、CERAというERM(エンタープライズ・リスクマネジメント)の国際資格を取得するなら、グローバルにも活動できます。

アクチュアリーの試験勉強と過去問

 アクチュアリーの資格を取得した多くの方は、今回ご紹介していくアクチュアリーの過去問を活用して試験対策をしてきました。アクチュアリーの試験勉強に、どのような問題が出題されるかを知るため、また解き方を覚えるために、数多くある過去問の練習は欠かせません。アクチュアリーのホームページには、昭和37年度からの問題が掲載されており、PDFで取得できます。解答と解説があり、採点もできますので、実際に解いてみることをお勧めします。今、勉強していてどの位の段階にいるのか、確認してみましょう。また、過去問でテキストと同様に問題を理解することができます。

 これから、アクチュアリーの試験と範囲について、過去問の活用法や解くポイントなどをお伝えしていきます。ぜひ、試験対策に過去問を活用し、問題を解く実力を身に着けましょう。

アクチュアリーの試験科目は

日本では、アクチュアリーの仕事をしている人は「保険数理人」とも呼ばれていて、「日本アクチュアリー会の「正会員」です。正会員になるためには、アクチュアリー試験の第1試験と第2試験の7科目全てに合格する必要があります。

 第1試験の1科目を合格できると研究員、全科目を合格すると準会員となります。

 第1試験は、「数学」、「生保数理」、「損保数理」、「年金数理」、「会計・経済・投資理論」の5科目です。第2試験は、「生保コースの生保1、生保2」、「損保コースの損保1、損保2」、「年金コースの年金1、年金2」から1つのコースのうちの2科目を選べます。

アクチュアリーの試験範囲と過去問

 アクチュアリーの試験範囲は、ホームページに掲載されているテキストの中からと限定されています。過去問は、テキストを理解しているかどうかが試されます。過去問も、アクチュアリーのホームページに掲載されていますが、解答と解説・配点もありますので、実際に問題を解いてみることをお勧めします。

 過去問の問題は、数が多いですが、できるなら10年~20年分は解いておきたい問題です。その中でも、解いていくために出題頻度の多い問題を選ぶこともできます。数字などが異なるだけで、似ている問題も多くあります。特に、テキストに出てくる問題は解けるようにしておきましょう。

第1試験:過去問を解くポイント

どんなポイントに気を付けて勉強すれば良いのでしょうか?

「数学」

数学はすぐに取り掛かりたい科目です。『確率・統計学・モデリング』の3つが出題内容です。特に、統計は基礎を押さえる必要があります。統計量は覚えておきましょう。アクチュアリーの統計は、統計検定の問題よりも難関です。例えば、アクチュアリーの数学では、テキストと過去問に出てくる「統計的推測」など、アクチュアリー記号を用いた数式を覚えておくことが必須になります。事前に覚えておくと、試験で問題を解ける数式です。他にも統計学の区間推定や区間推定を押さえておくと、合格ラインに近づけます。

 確率は、二項分布、ポアソン分布、ベータ分布などの確率分布があります。分布から確率密度関数を出し、平均や分散を導き出します。公式を用い、他の解答方法も幾つか過去問から覚えましょう。過去問を解きながら、解説を見て解答方法を覚える方法も、ぜひ試してみてください。第2問、第3問で式変形できることが必要となりますので、最初の段階で基礎を固めておきたい部分です。

 モデリングは、回帰分析・時系列解析などを押さえておきたいですが、試験では出題が少ない分野で、過去問でもあまり多くはありません。しかし、モデリングの問題で点差が出てしまう可能性がありますので、テキストに載っている部分は少ないですが、過去問で練習しておきましょう。

「生保数理」

 生保数理では、アクチュアリー出版元の「二見隆:生命保険学」からの出題が多い科目です。集中してテキストと類似している過去問を解いていくなら、得点を取りやすい科目です。ハーディーの公式や就業不能と連合生命など、公式が多いので出題の多い公式を練習します。似ている式が多いため、過去問を解いて理解していくことをお勧めします。

「損保数理」

 損保数理は、テキストとその問題集で公式を覚え、過去問を解いていきましょう。計算量が多く、計算は難しいですが、公式をしっかり覚えることで問題を解いていくことが可能になります。本番では、過去問と同じレベルの問題が出題されます。新傾向の問題も出題されますが、公式を用いて問題を解いていきます。

テキストの内容も難しくなっていますが、公式を覚えたらできるだけ多く過去問を解いて、テキストと合わせて解答方法を理解しながら試験対策をしていきましょう。

「年金数理」

 年金数理は生保数理を基盤とした応用の問題がある、難易度高めの科目です。そして、テキストの章末問題から出題が多くでます。年金数理に関しては、テキストの内容が少なめに感じるかもしれませんが、生保数理の内容に加えて過去問を解いていくことで、実際の長い問題や応用問題に備えられます。

「会計・経済・投資理論」

 会計は、テキストの内容がそのまま出題されます。しかし、範囲が広いため、過去問から出題されそうな問題を把握しておくことができます。

 経済も、テキストを読み、過去問で問題を解いて練習しておきましょう。

 投資理論は、過去問に同じような問題が多くあります。テキストを読んだ後は、過去問を解いておきます。

 「会計・経済・投資理論」は、点数が取りやすい科目とされてきました。しかし、近年は投資理論が難しくなってきているようです。過去問は、近年の問題が似ている傾向にありますので、繰り返し問題を解いていくことをお勧めします。

第2試験:過去問を解くポイント

 第1試験の5科目全てに合格すると、第2試験の受験資格が得られます。第2試験の合格者は、アクチュアリーの実務に携わりながら勉強し、必要な専門知識を得てから合格しています。第1試験、第2試験は同じ日に試験がありますので、合計7科目全てに合格するまで2年必要です。第2試験の問題は、論文的な出題となっており、問題解決型の解答が求められます。

 ここからは、第2試験の2科目の過去問の勉強法をお伝えします。

「生保コース」の生保1、生保2

 生保コースの問題は、テキストと過去問から多く出題されます。テキストと過去問の同様の知識と問題解決能力が問われる問題を集中して解きます。責任準備金は、テキストや過去問からいくつかの用例でも出題されますので、チェックしておきましょう。他にも、経済価値ベース、第三分野保険などは出題頻度が高いので、テキストと過去問を確認し、10年分は解いておきたい問題です。

「損保コース」の損保1、損保2

 損保コースの勉強内容は、損害保険料率や損害保険会計の特色と体系を外さずに行います。そして、責任準備金も範囲内になっています。ここでも、過去問をできるだけ解いて確実に理解していきましょう。

「年金コース」の年金1、年金2

 年金コースは、平成28年度以降、試験範囲が改正されています。厚生年金基金制度の取扱いは試験範囲ですが、必須ではありません。さらに試験範囲には、公的年金制度の問題、中退共制度等の周辺制度などが含まれます。

 年金1と年金2の仕分けも、数理業務を行う上で必要な制度の知識(設計・税務)と、数理業務を中心とした制度の運営(財政・退職給付会計)に分けられます。

 テキストは、平成28年1月に改訂されました。試験問題のサンプルも公開され、それ以降の過去問もホームページに掲載されています。

アクチュアリーの資格を取得できると

アクチュアリーの資格を取得している方の需要は、生命保険や年金の分野だけではなく、企業、官公庁でも需要が高まっています。

 アクチュアリーの資格は、かなり難易度が高く、高度な数学が求められます。ですから、多くの科目を取得するほど就職に有利になりますが、全科目を合格して正会員になるなら、さらに希望する就職先に決まる可能性が高くなります。

 アクチュアリーの全科目に合格するには平均8年となっています。アクチュアリーの正会員は、第1試験の5科目を2年から数年かけて合格し、第2試験では企業などで実際にアクチュアリーとして仕事をしながら3年程勉強を続けて、合計8年程かけて正会員になっています。

アクチュアリーの過去問を活用する利点

 アクチュアリーの試験対策には、テキストに加えて過去問が欠かせません。過去問の練習量で試験の点差に違いが出てきます。少なくても10~20年分の過去問を解いておきましょう。

 アクチュアリーのホームページにある、過去問の解答と解説から、問題の解答方法を理解でき、問題を解くスピードも身に着きます。

そして、過去問を解くなら、科目ごとの出題傾向を知ることができ、似ている問題を多く解いて覚えておくことができます。

さらに、ある問題についてテキストの内容が少なくても、過去問を解く量や回数が多いほど理解が深まり、問題を解きやすくなります。

 過去問を解く時、分からない部分はすぐに解説を見て、解答方法を理解して覚えるようにします。テキストと同時に過去問を解いていくなら、効率良く理解し覚えられます。

 しかし、しっかりテキストを読み込んでから問題を解く方法もお勧めです。難しい点は特にテキストと過去問の両方をフル活用してみましょう。

 アクチュアリーのホームページには、アクチュアリー受験研究会というコミュニティもあり、過去問の詳しい解説が掲載されています。最短の解答方法など、先に受験した方の方法も参考にできます。

 試験対策のために、ぜひテキストとともに過去問を活用していきましょう。

アクチュアリーの資格取得のために過去問でできること

 アクチュアリーの試験勉強をする時、テキストと同時に、過去問を用意することをお勧めします。

 アクチュアリーのホームページに、第1試験、第2試験のテキスト(アクチュアリー会発行)が掲載されています。

過去問は、昭和37年度からの問題が、年度ごと、科目ごとに載っています。平成元年度から、第1試験の5科目と第2試験の3コース2科目ずつ、合計全7科目が掲載されています。PDFでダウンロードし、印刷して活用しましょう。

まとめ:アクチュアリーの過去問で試験対策を

 ここまで、アクチュアリーの試験対策の過去問を活用するポイントや利点をお伝えしてきました。アクチュアリーの試験対策には、長期間の勉強と時間が必要です。1科目のためにも多くの試験対策をします。仕事をしながら勉強を続け、第2試験の受験資格を得る必要もあります。

そのため、できるだけ効率良く試験対策をするために過去問を使ってみてください。

前半で述べたように、出題頻度の多い問題を選ぶこと、数字などが異なっていて似ている問題、テキストに出ている問題は、過去問を解いておきましょう。

 過去問を見ていて、出題頻度の高い問題は、よく解けるよう準備しておきます。

 過去問の活用方法と活用量で、問題に対する知識と理解度が増しますので、過去問の問題をスラスラと答えが出るまで解いていきましょう。特に、第2試験では、知識と問題解決能力が試されるため、解説を参考にしながら覚えると効率的です。

アクチュアリーの試験対策は、多くの努力が求められます。しかし、多くの方が資格を取得後、やりがいを感じている仕事です。この先も、アクチュアリーの仕事は需要があり、活躍できる場が沢山あります。

ぜひ、アクチュアリーの資格取得を目指す方は、試験対策には過去問を積極的に活用されてください。

 そして、試験では実力を発揮でき、良い成果が出ることを願っています。