【完全保存版】アクチュアリー1次試験数学の勉強法【参考書・学習スケジュール・過去問の使い方など】

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どんな対策をすれば数学に合格することができるの?

使うべき参考書やスケジュールの立て方がわからず、勉強を効率的に進める自信がない

そんなお悩みを解決する記事です。

おそらくほとんどの人が最初に受けるであろう、数学の試験。アクチュアリーを目指すうえで最初の関門になります。どんな対策をしていけば良いのでしょうか。

全体像

数学を攻略するには、どのような分野を、どの程度のレベルまで上げればよいのでしょうか。全体像の紹介をしていきます。

出題分野

分野としては大きくわけて、以下の3つがあります。

「確率」

「統計」

「モデリング」

これらの分野をそれぞれ勉強していくイメージです。ただし、新傾向の問題も多いので注意です。

確率

まず、確率の分野については、高校数学に加えて、確率分布を使えるようになることがポイントとなります。ここが受験や大学の試験との決定的な違いです。

確率分布について、学校では扱わないくらい深い知識が問われます。

その習熟度は、さながら「手足のように確率分布を操れる」くらいのレベルを想定しておきましょう。

たとえば、以下の頻出の分布については、分布関数、確率密度関数、期待値、分散を必ず覚える必要があります。

ポアソン分布

ガンマ分布

二項分布

道端ですれ違ったひとに突然

「期待値がλのポアソン分布の分散は?」

と聞かれても、反射的に

「λ」

と答えられるようにしましょう。

それくらい、脳に刷り込まれている必要があります。

それを前提として、他の関数についても主要な値はすべて覚えましょう。

覚えることが必須ではない問題も多いですが、導出するよりも覚えた方が得です。

というのも、アクチュアリー1次試験の数学はマーク式の試験だからです。

途中経過を問われない以上、暗記している公式が多ければ多いほど必然的に有利になります。その分の時間をほかの問題を考える時間として使えるのですね。勉強の段階では問題を解いていく過程で、どのように確率分布を使うのかを練習して覚えていきましょう。

統計

次に、統計の分野については、点推定、区間推定、検定が主な出題となります。あまり癖が強いわけではなく、それぞれ問題がパターン化されています。

1度理解してしまえば、後は問題を解いて練習するのみです。

ただし、計算ミスをしやすいところなので、これでもかというくらい計算練習をする必要があります。マーク式の試験なので、計算をしっかり合わせる意識が大事なのです。

たとえば、以下の分野を見て、「この分野は苦手だな」といったものがあれば集中的に勉強しましょう。

確率密度関数,分布関数の意味,計算

平均,分散,モーメント母関数,特性関数の計算

大数の法則,中心極限定理

推定,検定の意味

推定,検定のいろいろな手法

最小二乗法の回帰係数の推定,検定

確率統計は上記のような分野が試験範囲です。

モデリング

最後に、モデリングの分野については、配点が低い(10点分くらい)ので、最短で合格を目指すのであれば、基本的な問題を中心に勉強すべきでしょう。

実際、モデリング分野でひねった問題はあまり出ません。「勉強すればしっかり取れる分野」として認識し、丁寧に基礎を勉強しておきましょう。中でも、回帰分析とシミュレーションを中心に抑えておくと良いでしょう。

必要な数学レベル

アクチュアリー数学の1次試験に必要な数学レベルは、数学科専攻の学部3年生程度です。

アクチュアリー試験を突破するには確率・統計の勉強以前に基本的な数学の知識が必要です。具体的には、以下の項目については身についている前提とされていると思ってください。

・高校数学

中には、高校数学の知識のみで解ける問題もけっこうあります。(ただし思考力は求められます)高校数学(特に確率,場合の数,データの分析,数列,微分積分)をしっかりと理解していることが前提となります。概念としての理解に加えて、基本的な公式や定石で怪しいところがあれば確認しておきましょう。(たとえばΣ計算の公式や漸化式の解法)

数学科のみなさんは、あらためて復習をする必要はないと思います。不安であれば、大学受験のときの青チャートなどを引っ張り出してきて勉強しましょう。

・基本的な線形代数

理系学部の場合,大学1年で習います。大学に入ってはじめに苦しむ科目でもあるのではないでしょうか笑

アクチュアリー数学では、マルコフ連鎖や重回帰分析に関連した問題が出題されます。

そこで線形代数の知識が求められる機会があります。(抽象的な線形代数の理論、というより簡単な行列計算レベルですが)

基本的に線形代数の優先順位は低いと考えてもらって結構です。

アクチュアリー数学はあくまで「アクチュアリー統計」であって、数学全般が求められているわけではありません。

・基本的な微積分

こちらも理系学部の場合,大学1年で習います。

注意してほしいことがあります。微積分は、線形代数と異なり合格のために必須ですというのも、保険数理の勉強をするうえで微積分ができないと理解できない数式が頻出するからです。

たとえば、統計学における式変形でいきなり微分が出てくることは日常茶飯事です。

生保数理においても式変形の証明を見るとよく微積分がでてきます。

抽象的な解析学ができる必要はありません。また、微積分の証明問題を解ける必要はありません。簡単な微分積分の計算ができればOKというレベルです。「微分積分を使った証明をアクチュアリー参考書の中で見かけても理解できる」というレベルで大丈夫です。

参考書

参考書は以下のものが有名で、合格者でも使っている人が多いです。

確率・統計の参考書:「統計学入門」

確率の問題集:「弱点克服大学生の確率・統計」

統計の問題集:「明解演習 数理統計 (明解演習シリーズ) 」

モデリング:アクチュアリー会指定の「モデリング」

全体への対策:アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 数学

演習:過去問10~20年分

アクチュアリーを目指して数学を受験する場合、これらの本をやっていくことになります。

ちなみに、公式の参考書や問題集は、確率と統計分野については使っている人は多くない印象です。というのも、かなり難易度の高い解説が中心になっているので、深い理論を理解したい人向けの本、といったイメージなのです。

あくまで「問題を最短の時間で解けるようになること」にフォーカスしたとき、公式の参考書でなく上記のような参考書で勉強するのが時間のない人にとってはありがたい選択肢になるでしょう。

それぞれ簡単な解説を加えていきます。

統計学入門

この書籍は、問題を解くためではなく、よく分からない分布を理解するために読む本です。

例えば、カイ2乗分布やF分布がどういう分布なのかわかるでしょうか?

「聞いたことはあるけれど、いざ説明しようと思うと難しい…」

と思ってしまう人も多いのではないでしょうか。

そういった疑問にイメージを与えてくれるため、記憶に定着しやすくなります。

統計学の本は数式ばかりのことも多いですが、この本はイメージや図を使って理解しやすい形にまとめてくれている良書です。

たとえば、「検定」の問題では平均が既知で分散が未知の場合何検定をすればよいか、というタイプの問題はほぼ毎年出題されます。

この問題について、

「こういうときはこうするんだ!」

と詰め込み式に学習することも可能ですが、どうせなら理屈も含めて覚えたいですよね。

そこで、この本のようなわかりやすい解説書が必要になります。

何故その分布を使うのかという説明を非常に丁寧にされています。その章を繰り返し、繰り返し読むことで自分の手足の一部として統計学を使っていくことができるようになるのです。

弱点克服大学生の確率・統計

アクチュアリーの数理試験対策で1冊しか使えないとしたら何をやるか、と言われたら迷わずこの本をあげます。というのも、確率の問題の出題範囲をほぼカバーしているからです。

アクチュアリー科目保持者の間でもかなり評判の良い本です。

公式の一つ一つが非常に利便性が高いです。ほかの本よりもアクチュアリー試験に寄せたチョイスの問題になっています。正直、確率分野についてはこれ一冊で十分だと思います。

ただし統計分野は流石にこれ一冊だと手薄なので別途やる必要があります。

そもそもこの本は、参考書というよりは問題集です。

つまり、ある程度知識がある前提で、さらに知識を応用する練習をしたり、定着度をあげるためのものです。ゼロの状態からやろうとすると、非常に厳しいかもしれません。

大学受験で扱われている確率分野はまだしも、統計分野は別の対策が必要です。

明解演習 数理統計 (明解演習シリーズ)

丁寧に統計学の勉強ができる本です。

基礎的な内容から応用的な考え方まで幅広くカバーしています。

過去にはアクチュアリー試験でほぼこの参考書の問題そのままが出たとの話も…。

統計分野の参考書はこれで決まりでしょう。

アクチュアリー会指定の「モデリング」

モデリングは、きちんとした参考書が市販のもので少ないのがネック。

しかし、そこはアクチュアリー試験。公式の問題集が充実しています。

アクチュアリー会指定の「モデリング」教科書は非常にわかりやすく、オススメです。

アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 数学

アクチュアリー試験の対策を目的に作られた本というだけあり、非常に試験対策に役立つ内容となっております。過去問と並行して進めることで、アクチュアリー特有の問題にうまく対処できるようになるでしょう。

過去問10~20年分

過去問をかならずやりましょう。

最低でも10年、できればそれ以上やります。

10年分は、問題が出てきたらスラスラと回答をしゃべれるくらいにやる必要があります。

というのも、過去の問題と似たパターンの問題も多いので、過去問を解けるようになることは合格に必須の条件だからです。

学習プラン

試験まであと1年の状態から始めると仮定して、学習プランを立てました。

参考にしてください。1年間の全体像を7ステップの順序にすると、以下のような順序です。

1 勉強する範囲の全体像を把握するために、参考書を軽く読む。

2 参考書に載っている問題を5分ほど考えて、答えがわからなければ解答を読む。

3 解答を理解してみる。

4 もう一度解きなおす。

5 解けたらポイントをまとめて次の問題へ。

6 これを繰り返して参考書をやるきる。

7 過去問でも同じことをやる。(10~20年分)

それぞれのステップでのやるべきことを簡単に解説していきます。

その前に、数学の勉強の考え方を簡単に説明します。

数学の基本的な勉強法

数学の学習の初期段階においては、参考書や問題集の問題を自力で解けなくても大丈夫です。 むしろ、解答や解説をしっかり読んで「考え方」「解き方」を理解することが学習の中心です。 つまり、学習の流れは「解法習得」→「演習」→「解法習得」→「演習」です。

上記を前提にして、ステップごとに説明をしていきます。

1 勉強する範囲の全体像を把握するために、参考書を軽く読む。

脳科学的に、人間の学習は「部分⇒全体」よりも「全体⇒部分」のほうが良いと言われています。つまり、今回の場合だと「大きな見出しを始めに見てからより細部に入っていく」ことが正解です。

参考書を一通り読んでみましょう。細かいところはわからなくても、現時点ではかまいません。

2 参考書に載っている問題を5分ほど考えて、答えがわからなければ解答を読む。

一通りインプットができたら、章末問題などの問題を解きます。

分野ごとに章末問題がある本が多いので、分野ごとの現時点での定着度がわかります。

ここまではほとんどの人が行うと思いますが、大事なのはこの後のステップです。

3 解答を理解してみる。

解けなかった問題は、まず解答・解説を熟読して、「どうすれば解けるのか」を理解しましょう。必ず、自分のやり方と解答の間にギャップがあるはずです。その点をこの段階で明確に認識します。 

解答が理解できたら、その場で、解答を見ないようにして、ノートに自分で解き直してみます。 途中で詰まってしまったら、解答をもう一度ちらっと見ます。

その際に、以下の点をはっきりとさせましょう。

理解できていなかったポイント

忘れてしまっていたこと

そのうえで続きを見ます。

4 もう一度解きなおす

最後まで解答がたどりつけたら、次の問題に移る前に以下のような復習をしましょう。この「振り返り」の段階がとても重要です。 まず問題だけを見て、 

「この問題は○○の場合の、□□を求める問題である」 

「第一手は□□について式を立てることである」 

「○○の定理が使える形になるので、□□の形にして計算すればよい」

 

といったような、問題の解き方のポイント・流れ・注意点を、言葉で復唱します。

振り返りを言語化することで、脳にしっかりと刻まれるようになります。

5 解けたらポイントをまとめて次の問題へ

次に、解答をざっと流し読みして、 

「自分はここが分からなかった。このポイントを覚えておけば次からは解ける」 

「ここの部分が計算のややこしいところだ」 

といったように、解答の中で自分が詰まったところの反省をするようにします。 

とにかく、

自分はなぜ解けなかったのか

どうすれば解けるのか

何を覚えておくべきなのか

といった事柄を、意識に上らせることが大事です。 

特に混合されがちなのが

「覚えておくべきこと」

「思いつくべきこと」

の間の差です。

このふたつをしっかり区別したうえで、必要なものを必要なだけ覚えましょう。

ただ何となく「ふーん、そうすれば解けるんだ〜」と感心しているだけでは、次に出された時はまた解けません。 

この作業が終わったら、その問題を先生になったつもりで説明してみましょう。

本当に理解しているということは、人に教えられるということです。

また、言葉による説明をきちんと書いて解くことは、自分の理解を深め、内容を記憶しやすくします。 

説明は本当にしなくても、脳内で他の人に説明する想像をするだけでも大丈夫です。

質問への対処も想像しましょう。

以下のような問いに、答える想像をするのです。

「ポアソン分布ってなんですか?」

「なぜ漸化式を使うという発想が出てきますか?」

このような質問を想定することで、「あ、ここは理解したと思っていたけれど本当はわかっていなかったな」と自覚することができます。

6 これを繰り返して参考書をやるきる

例題を理解して頭に入れたら、次は練習問題・類題などを解いてみます。 (ない場合は、例題を再び解きなおします)

ここでは、できるだけ自分の頭で考えて解いてみましょう。 

例題とどこが似ていてどこが違うのか

同じ考え方が使えそうなところはどこか

といったことを意識しながら、さっきやった例題の真似をして、自分なりに解いてみます。

そうやって自力で答えを出すことができたら、答え合わせをして、あとは例題の時にやったのと同じような復習・反省をします。 また、自分で考えて解き方が分からなかった場合も解答を読んで、同じような復習・反省をしましょう。 

正解できなかった場合、解けなかった場合は、例題の時にやった反省に加えて、 

例題と同じ解法で解ける問題のはずなのに、なぜ解けなかったのか

例題と同じ考え方をしている部分はどこで、例題にはなかった考え方をしているのはどの部分か

例題は理解したつもりだったのに、実はよく分かっていなかった部分はないか

例題の解法は、問題のどこをいじられると、どのように変化するのか

といった反省も加えましょう。

また、参考書・問題集は復習をしないといけません。復習をする際には、もう一度問題をノートに解き直すのではなくて、 上で述べたような感じで

「この問題は○○を聞かれているから、〜〜のようにすればよい」

「注意すべきポイントは△△の部分だ」 

という風に、解答の「ポイント・流れ・注意点」を頭の中で復唱するようにします。 

もし忘れていたら、もう一度模範解答をざっと見直して、何がポイントだったのかを思い出しましょう。 そして再び解答を隠して、自分で「ポイント・流れ・注意点」を唱えてみます。 このようにすれば、1問30秒ほどで復習ができます。できるだけ頻繁に復習をする方がいいですが、 

最低限、「その日の学習を終える時」「次の日の学習を始める時」「その単元が終わる時」「その参考書が終わる時」 というペースでの復習をするといいでしょう。 

(ただし、あまり頻繁に復習しすぎると、「今はただ目に焼きついているから覚えているけど、半年ほどしたら忘れてしまう」 ということもあり得ます。常に「自分は本当にこれを理解しているのか。模試や入試で出されてきちんと解けるか」ということを 

問いかけながら復習するように心がけましょう。) 

ここで、「この参考書をマスターした」と言える目安を以下に示しておきます。

・ページをペラペラとめくって、どのページのどの問題も見覚えがある。 

・例題は見た瞬間に解答の「ポイント・流れ・注意点」を説明できる。 

・練習問題もちょっと思い出せば解答の「ポイント・流れ・注意点」を説明できる。 

・全体的に、自分がどの単元のどの分野のどの問題で苦労したのかを覚えていて、何が難しくて何が簡単なのかを説明できる。 

・自分がやや苦手な項目、理解不足だと思われる項目を挙げることができて、それが参考書のどのへんに載っているかを知っている。 

上記のようなレベルを目指してみてください。

7 過去問でも同じことをやる(10~20年分)

今までの手順を過去問でもやります。

すべてやりきったころには、数学の知識が今までとは段違いに増えていることでしょう。

その後は、過去問を解いていてわからなかった内容を参考書に戻って学習したり、過去問をよりスムーズに解けるように訓練しましょう。

復習の方法

これを達成するためにも、日頃から、問題を解く以外に「これまでやったところをパラパラと見返す」という行為をすると有効です。 

そうやって何気なしに見返していて「あ、この問題、どうするんだったっけ?」というページが発見されれば、 そこをピンポイントで復習することができます。

そうやって、知識を忘れても忘れても繰り返し塗り重ね、 修復していく作業を習慣づけましょう。

また、過去問から逆算することが重要です。

特にアクチュアリーは、過去問との類似性が高い試験です。

上記のような流れで、理解を進めていきます。

時期別にいうと、達成度としては以下が目安になるでしょう。

【時期別に要求される達成度】

1月 テキストを読み始める

2月 確率分野を理解

3月 統計分野を理解

4月 モデリング分野を理解

5月 過去問演習を4割以上の正答率でこなせる

6月 過去問の解説をほぼすべて理解できる

7月 テキストの内容をほとんど理解できる

8月 過去問で6割以上解ける

9月 過去問を7割以上解ける

10月 過去問をほぼすべて解ける

11月 (最終調整)

12月 試験本番

上記のイメージで、自分の残り時間と照らし合わせて学習プランを立てましょう。

学習プランはあくまで目安です。

秋から勉強を始めて受かる人もいますし、もともと数学系の人は試験直前にすこし対策をするだけで合格するでしょう。

ただ、順序としては

確率⇒統計⇒モデリング

を遵守することをおすすめします。

というのも、モデリングは配点が低いので、後回しにしてもそこまで影響がないからです。

また、確率論を理解していないと統計を理解するときに支障が出てきます。

なので、確率を学んでから統計にいくようにしましょう。

勉強法のベースとしては上記の方法論を用いることにして、個別の科目の対策もしていきます。

まとめ

数学の勉強は、手順とやりかた、使う参考書などを間違えなければ、スムーズに進めていくことができます。効率的に勉強を進めて、ハイスピードでの合格を目指していきましょう!

試験勉強で悩んでしまうことがあれば、以下の講座を使ってみてください。